ライフステージ別 血友病とのつきあいかた

監修医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 部長 福武 勝幸 先生
医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 カウンセラー 小島 賢一 先生

就職、どうする?

就職活動をはじめたいけど、
血友病のことは会社に伝えた方がいいのかな……

就職活動では、
血友病であることを伝える?伝えない?

就職活動において、就職先に血友病のことを伝えるかどうかは非常に難しい問題です。

血友病であっても、必要に応じてきちんと補充療法を行っていれば、関節に負担のかかりやすい立ち仕事や力仕事のように不向きなものはあるにせよ、血友病でない人同様の仕事に就くことが可能です。

しかし、残念ながら就職活動においては、血友病がない場合に比べ「不利」と受け止められる場合が少なくないようです。

会社に理解があれば、血友病であることを伝えておくことで、急な出血で休まなければならないときにそのことを伝えやすかったり、出血時にがまんすることなく自己注射ができるなど、安心感をもって働くことができるかもしれません。しかし、会社側に理解が乏しい場合には、就職に難色を示されることもあるなど、会社によって対応はさまざまです。

きちんと補充療法を行ってさえいれば、ふだんから出血に悩まされることもなく、日常生活にも支障はないのですから、就職前にあえて血友病であることを伝える必要はないものと考えます。実際、血友病であることを告げず、また就職後もそのことを明かさずに仕事を続けている人も少なくありません。

ただし、仕事の内容によっては血友病の事を伝えておく必要があることもありますので、不安な人は主治医や看護師、ソーシャルワーカーなどと、どうすれば自身の希望に沿った形で働けるかを相談しましょう。

「障害者枠」での就職が
可能な場合があります。

血友病性関節症や感染症などによって身体障害者の認定を受けている患者さんの場合、いわゆる「障害者枠」での就職が可能な場合があります。

障害者枠とは「企業は雇用の規模に応じて一定の比率で障害者を雇用しなければならない」という制度です。職業安定所や障害者就労センターなどであっせんしているほか、障害者向けの求人を出している企業もあります。また、最近は、障害者の就職活動をサポートする企業やNPOもあるので、そこで紹介を受けるという方法もあります。

就職しはじめのころは、
体調管理に気をつけましょう。

就職しはじめの時期はプライベートの時間も取りにくく、定期補充療法をさぼりがちになる人が少なくありません。しかし、それが原因で出血してしまい、会社を休むようになっては後悔するだけです。同僚と変わらずに仕事をこなしていくためにも、意識的に補充療法を行い体調管理に気をつけましょう。社内あるいは会社近くの医療施設で注射が行える、行ってもらえる場所が確保できればさらに安心です。

また、無事に就職できたとしても、出血のために業務に支障をきたしてしまい、職場に事情を説明しなければならない場合も出てくるかもしれません。このような場合には主治医や看護師、ソーシャルワーカーにも入ってもらい、会社の誰に、どのように説明するかを相談しましょう。

このコンテンツには、乳幼児期から中高年期に至るまで、何度も「定期補充療法」という言葉が出てきます。
関節内出血の予防、関節症進展の予防、脳出血などの重篤な出血予防の重要性は年齢を問いません。そのため、定期補充療法は生涯にわたって行われるべきである、という声もあります。
患者さん本人の状況や背景にもよりますが「どこが改善できるのか知りたい」「改善したいところがある」という人は、主治医の先生に改めて相談し、その必要性について話し合ってみるのもよいでしょう。

2024年1月作成 BNF46O001A