監修荻窪病院 血液凝固科 顧問 鈴木 隆史 先生
歩きはじめるようになって、転んだりぶつけたり……
たくさん遊ばせながら、出血を減らすポイントは?
乳児期から幼児期にかけては、日に日に動きが活発になり、ぶつけたり、転んだりということも増えてきます。特に、立ちはじめ・歩きはじめの時期は、バランスが不安定で頻繁につまずいたり尻もちをついたりします。
血友病のお子さんは、こうしたちょっとしたつまずきや尻もちが原因で大きな出血を引き起こす場合があります。過剰に心配する必要はありませんが、無用のケガを防ぐためにも、ふだん暮らしている場所に工夫をしてみましょう。
血友病のお子さんでも、骨や筋肉を正常に発育させるためには適度な運動が必要です。ケガをおそれすぎず、十分に遊ばせることで体力や筋力がつけば、転びにくくなるだけでなく、関節内出血の予防にもつながります。
また、ケガを防止するための工夫は大切ですが、痛みを経験することで子どもが自ら学習することもあります。乳・幼児期は、子どもが探求心や好奇心をどんどん伸ばして世界を広げていく時期です。心配だからとあまりに神経質になりすぎないよう、そばで見守る姿勢も大切だと思います。
そのためにも、万が一、ケガをして出血した場合の対処方法や、見た目にわかりにくい内出血でどのような症状が現れるかについて、あらかじめ十分に理解しておきましょう。
長い目でみると、ケガを恐れて運動しないようにさせるよりも、補充療法を行いながら思うぞんぶん遊ばせるほうが、お子さんの情緒の安定や精神面の発達に良い影響を与えるなど、多くのメリットがあると言えるでしょう。
お子さんが活発で、ころんだり傷ついたりによる出血が多く、外来で補充を受けることが多いようなら、主治医と相談して、通院で週に1~2 回の定期補充療法を開始するのも選択の一つです。
※ 幼い患者さんは、血管が細く注射が難しい場合がありますので、ご家庭でうまく注射ができないようなら、病院で注射をお願いすることになります。
このコンテンツには、乳幼児期から中高年期に至るまで、何度も「定期補充療法」という言葉が出てきます。
関節内出血の予防、関節症進展の予防、脳出血などの重篤な出血予防の重要性は年齢を問いません。そのため、定期補充療法は生涯にわたって行われるべきである、という声もあります。
患者さん本人の状況や背景にもよりますが「どこが改善できるのか知りたい」「改善したいところがある」という人は、主治医の先生に改めて相談し、その必要性について話し合ってみるのもよいでしょう。
2022年6月作成 BNF46M001A